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左側画像: NASAハッブル宇宙望遠鏡のアドバンスト・サーベイ・カメラで2002年7月に撮影された「0313-192」の広角画像に、大型干渉計型電波望遠鏡によって20センチの波長で撮影された電波画像が赤色で重ねられた画像。銀河は、縁をこちらに向けた形になっている。画像右上に小さく写っている渦巻銀河は「0313-192」には関係のない、地球から10億光年近くの距離(「0313-192」からは地球からの距離より2億光年以上近くの距離)にある銀河である。光を吸収しているチリの縦方向の複雑な構造と、歪んだチリの筋の外側に青色の星形成領域が存在していることにより、縁をこちらに向けていても、この銀河が渦巻銀河だということがわかるのである。
Credit: NASA, NRAO/AUI/NSF and W. Keel (University of Alabama, Tuscaloosa)
右側画像: 「0313-192」のハッブルのクローズアップ画像。大型干渉計型電波望遠鏡によって3センチの波長で撮影された高解像度電波画像が赤色でオーバーレイされている。電波画像には、ジェットの「根元」部分が写っている。
Credit: NASA, NRAO/AUI/NSF and W. Keel (University of Alabama, Tuscaloosa)
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原子サイズ以下の粒子が光速に近い速度で動いている巨大ジェットを伴った銀河は、宇宙のいたるところで数千も見つかっているが、それはいつも、楕円銀河か、融合の途上にある銀河だった、これまでは。3つの大望遠鏡「ハッブル宇宙望遠鏡」「大型干渉計型電波望遠鏡」(VLA)「8メートル・ジェミニ南天望遠鏡」を使った観測で、巨大なジェットが我々の天の川銀河と同じような渦巻銀河から放出されているのが発見された。
渦巻銀河はこのような巨大ジェットを作り出さないと考えられてきたが、これを考え直さなければならなくなった。この発見は、ワシントン州シアトルで行われたアメリカ天文学会で報告された。
この銀河をさらに観測して、このような強力なジェットが作り出されるためには銀河内でどんなことが起きる必要があるかということを考えれば、これまでにないようなユニークな考え方が生まれるかもしれない。
この銀河が存在している銀河団の結びつきがゆるいということが、この特定の渦巻銀河にジェットが形成される原因になっているのかもしれない。
このようなジェットを放出しているのは銀河核で、そこには超大質量ブラックホールによって桁外れに大きい重力エネルギーが供給されており、粒子が光速に近い速度まで加速されている。ブラックホール周囲には、ブラックホールに吸い込まれている物質でできた回転しているディスクがあり、この回転によって磁場がきつく巻かれた状態になっている。加速された粒子が細いジェットの形になっているのは、このきつく巻いた磁場が、散水ホースのノズルのように、粒子の流れを細くしているためではないかと考えられている。
楕円銀河も渦巻銀河も、その核部分には超大質量ブラックホールがあると考えられている。「0313-192」と名付けられた渦巻銀河からジェットが出ているという発見がなされたのは、電波と光学と赤外線の観測機器で銀河とその周辺を観測したおかげである。
この話は、発見者の1人である Frazer Owen が当時新しかったアメリカ科学基金のVLAを使って電波による500個の銀河団サーベイを始めた20年以上前に遡る。1990年代には、これも今回の発見者の1人の Michael Ledlow が Owen のプロジェクトに加わり、ニューメキシコ大学の博士論文のリサーチの一部として、同じ銀河団の光学観測を始めた。この銀河の電波画像にははっきりとジェットが写っており、 一方、Ledlow によるキットピーク国立天文台の光学画像では、この銀河が渦巻銀河かもしれないというヒントが与えられたのである。
こうして、地球から10億光年近くの距離にある「0313-192」は、渦巻銀河なのにジェットがあるという、不可解な天体だということが分かった。その後、VLAとアパッシュ・ポイント天文台の3.5メートル望遠鏡によるその後の観測で、この銀河が渦巻銀河かもしれないということが支持されたが、それはまだ決定的ではなかった。2002年春、シャトル・ミッションによってハッブル宇宙望遠鏡にアドバンスト・サーベイ・カメラがインストールされ、この新しいカメラによって「0313-192」の詳細な画像が撮影された。これによって、この天体がチリの多い渦巻銀河で、縁がこちらに向いているということが分かった。
ハッブルの観測のおかげでこの銀河が渦巻銀河だということが分かり、これまでの不確かさが解消された。さらに、ジェミニ南天望遠鏡の赤外線画像でハッブル画像が補足され、この銀河が渦巻銀河であることがさらに確固なものになった。
なぜこの1つの渦巻銀河だけが、これまで観測された他の全ての銀河とちがって、VLAなどの電波望遠鏡で明るいジェットが見られるのか、これの理解の方法が現在模索されている。この問題を解決するためには、いくつかのファクターを考えなければならないと学者は感じている。
この銀河のディスクはねじれており、このことが示唆しているのは、別な銀河が近くを通り過ぎたか、あるいはこの銀河が矮小銀河の伴銀河を飲み込んでしまったということで、そのためにディスクが歪んだのではないかということである。この銀河には、非常に質量の大きなブラックホールがその核に存在しているという兆候がある。銀河のガスが逃げる最短の道筋が、ジェットなのである。
「0313-192」は「Abell 428」と呼ばれる銀河団の中にあるが、この「Abell 428」は込み合った銀河団ではなく、結びつきの弱い小さな銀河団である。
楕円銀河に普通に見られる大きなジェットができるためには、銀河団の星間環境からの圧力が必要で、それによって粒子と磁場が急速に拡散せずにまとまっているのかもしれない。
しかし、渦巻銀河はこのような圧力のかかるような密度の高い銀河団の中には存在できない。「Abell 428」のような結合力の弱い銀河団は、渦巻銀河が生きるのにちょうど良い環境なのかもしれないが、ジェットが拡散しないような圧力も必要である。
いずれにしても、ジェットを作り出しているこのユニークな渦巻銀河のために、銀河ジェット形成に関連した現在の基本的な考えに疑問がわき上がっている。